キャリアは意思決定の鎖


キャリアは意思決定の連続によって形作られていく。転職などの重大な選択のみが、キャリアにおける意思決定ではない。むしろ、日常の場面で、些細なことでキャリアに関する意思決定が生じている。


例えば、今日は早く帰りたいのに上司から残業を頼まれた。そのとき「本当は帰りたいが、ここで恩を売っておいたら後々の出世に役立つかもしれない」と思って引き受けるかもしれないし、「この上司とはせいぜいあと数年しか付き合わないのだから、別に残業を断ったって、自分の今後にはほとんど影響しない」と思って帰ってしまうかもしれない。そのような考えが一瞬でも頭をよぎったら、それは立派なキャリアに関する意思決定だ。大それたものではなく、些細なものなのだけれども、日々のこうした些細な意思決定や選択の積み重ねでキャリアは形成されていくのだ。まさに「塵も積もれば山となる」である。


自分のキャリアというものを意識していなくても、日常の些細な出来事でキャリアに関する意思決定をしていることもたくさんある。例えば、いつもとは異なる仕事を頼まれたとき、それを引き受けるかどうかの意思決定をするわけであるが、引き受けた場合、異なる仕事から得られた経験から、別の分野にだんだんとキャリアをシフトしていくきっかけになるかもしれない。そちらの分野に興味がでてきて、関連する仕事を積極的に引き受けるようになるかもしれない。このような無意識的な意思決定も、自分のキャリアの方向性を左右するひとつのきっかけになりうるのである。