死ぬことは生きること

生き物はなぜ死ぬのか。自分が死ぬことは理不尽でならないと思うかもしれない。しかし、実に理にかなっている。個体が死ぬのは種が生きていくために必要なのである。


例えば、人間という種の「いのち」が持続していくためには、自然の環境変化に適応していかなければならない。個体が永遠に行き続ける能力を持っていたとしたら、むしろそのほうが環境変化に適応できず、滅びてしまう可能性が高い。生き物は死ぬ前に生殖活動を行い子孫を残す。そのプロセスで遺伝子のブレンディングを行なうため、環境変化に対して適応可能なかたちに自分達の種自身を変化させ続けることが可能となるのだ。遺伝子のブレンディングがなければ、同じ個体を再生産するにすぎないから、こちらもいずれ環境変化に適応できなくなり滅びてしまうだろう。


つまり、小まめに遺伝子をブレンディングすることが、種という「いのち」を環境に適応させながら長く持続させる秘訣なのである。小まめにブレンディングを行なうということは、生死を繰り返しながら子孫を生み、世代交代をしつづけることに他ならない。個体が生誕してから成人となり子供をつくるまでの20〜30年間というのは、宇宙の時間からすれば一瞬のことであり、十分に小まめな世代交代といえるのである。