なんとなく始めたほうが長続きする理由(ワケ)

明確な目的と強いモチベーションを持った上で何かを始める人と、誰かに誘われたとかいう理由で「なんとなく」何かを始める人とでは、どちらが長続きするか。一見すると、明確な目的をもって始める人のほうがそれに真剣に取り組むことから長続きするのではないか。なんとなく始めたという人は中途半端な志しかないからすぐに止めてしまうのではないかと思うだろう。


しかし、内田(2010)は、自らの経験から、「なんとなく」始めた人のほうが長続きするという。「友達に連れて来られた人」のほうが、「引っ張ってきた人」よりも本格的になってしまうというのは「ありがち」なことだとも指摘する。つまり、本人の意志ではなく、誰かにひっぱられて、なんとなく役者になったとか、なんとなく歌手になったとかいう人のほうが芸事は「続く」からだというのである。


その理由は何か。内田は、「なんとなく」始めた人のほうが、どうして「こんなこと」をしているのか、本人もよくわからないからだという。「どうしてこんなことをしているのか、本人にもよくわからないこと」は、すぐに止めてしまうと思いがちだがそうではなく逆なのだという。内田によれば、理由のよくわからないことを自分がしているときは、人間は「どうしてこんなことをしているのか」を知ろうとする。知るために一番簡単な方法は続けることである。


ずっとやっていて、いろいろな経験をしているうちに「あ、これがやりたくて、やっていたのか」という理由を発見できるのじゃないかを期待するからだという。わかるまでは止められない。気持ちが片付かないからだという。だから、なにか芸事を始める前には、なるべく「明確な理由づけ」をしない方がいいと内田はいう。できれば、まわりから「やめろやめろ」と言われたことや、本人も「これは向いていないよな」と思うことをやるのがよいという。


なぜ始めたのかよくわからないことについては、なんとか理由を見つけ出そうとする。自分がやったことについては事後的に合理化を企てるのが人間の特徴である。したがって、「継続は力なり」というのは、内田に言わせれば、継続することでいいことがあるのではなく、「継続している自分」を正当化するために、「いいこと」を創作(捏造)するので、続けているうちに気がつくと「いいことづくめ」になるのである。