お金を稼ぐことではなく「幸せになること」を目的として働こう

シェイ(2010)は、仕事をするにせよ何をするにせよ、幸せに焦点をあてることの重要性を説く。例えば、「あなたの人生のゴールは何ですか」という問いに答えてみる。その答えが何であろうと、それに重ねるかたちで、さらに「なぜ?」と質問してみる。さらに「なぜ?」と問いかける。これを繰り返せば、究極的に行き着くのは「幸せになるため」だという答えになる。つまり、私たちは全員、違う道をたどりながら「幸せ」というひとつのゴールに向かっているのだとシェイは言うのである。


そもそも「幸せになること」が目的で仕事をしているのなら、もっと「幸せそのもの」の焦点をあてるべきだとシェイは考え、自身の会社を「社員、顧客、取引先、そして世界に幸せを届ける会社でありたい」という。実際、会社に強い結びつきを感じる社員はより生産性が高く、社員と会社との結びつきを示すのは、社内にどれだけ友人がいるか、社内に親友と呼べる人がいるかどうかだと指摘する。


シェイは、「これまでの人生の中で最高に幸せを感じたときのリスト」を作成したとき、幸せを感じたどの時も、お金を伴ってはいなかったという。何かを作っているときとか、クリエイティブで独創的でいると幸せに感じたとのことである。しかし、多くの人が、幸せとは人生を楽しむことであるにもかかわらず、お金がたくさんあること=多くの成功と幸せだと思い込むように洗脳されているかということに気づいたという。


シェイによれば、幸せとは、自分で自分をコントロールしていると感じられるか、自分が進歩していると感じられるか、つながり(関係の数と深さ)、ビジョンと意味(自分自身よりも大きなものの一部となること)の4つで決まると主張する。また、幸福感には、快感、情熱、崇高な目的の3つがあるが、外部刺激に依存する快感は長続きせず、フロー状態をもたらすような情熱は、2番目に長続きし、最も長続きするのは、崇高な目的であるという。よって、最初に自分にとってのより崇高な目標とは何かを見出して、追い求め、その後、その下に情熱、さらにその下に快感で得られる幸福感を捉えるのが適切な戦略であるという。


そしてシェイは、人を幸せにする「目的、情熱、快感」と、長期的にすばらしい会社を作り上げるもの「目的、情熱、利益」とに類似性を見出し、組織の原則として「幸せ」と用いることを推奨するのである。