生命とは何か

ナース(2021)は、「生命とは何か」という大きくかつ根本的な問いに対して、 生物学における5つの考え方を階段を1段ずつ上るようなかたちで紹介し、この5つの考え方を新たなかたちで結びつけることによって、生命の仕組みについての、はっきりとして見通し…

デジタル社会の本質とミルフィーユ化する世界

西山(2021)は、デジタル化の進展でいま何か決定的な変化が起こりつつあると指摘し、デジタル化が全面化する時代に変容しつつあるのは、個々の企業の経営のあり方だけではなく、企業が活動する産業そのもの、消費者を含めて取引を行う市場そのものが、新しい…

会計×戦略思考の本質

大津(2021)は、「会計がわからなければ真の経営者にはなれない」という稲盛和夫氏の言葉を引用しつつ、会計の数値を企業活動と結び付けて考えることができる人ほど、会計を手段として使いこなすことができていると論じ、「会計✕戦略思考」というかたちで経営…

生物と機械はどう違うのか

近年のAI(人工知能)の発達に伴い、シンギュラリティ (技術的特異点)というコンセプトに言及されることが増えている。これは、ざっくりというと将来AIが人間の能力を超えるという予想を指すものであるが、この考え方の根底には、人間のような生物と、コン…

ドラッカー+デザイン思考+ポーター=戦略の創造学

山脇(2020)は、ドラッカーの著作と、デザイン思考と、そしてポーターの競争戦略論を組み合わせることで、 新しい企業モデルである「共感と未来を生む経営モデル」を提唱する。言い換えれば、ドラッカーで「気づき」、デザイン思考で「創造し」、目的達成のた…

情報化/消費化資本主義の臨界

見田(2017)は、20世紀後半から現在にかけては、「近代」という加速する高度成長期の最終局面であることを示唆するが、この最終の局面の拍車の実質を支えていたのが、1927年の歴史的な「GMの勝利」を範型とする「情報化/消費化資本主義」というメカニズムだ…

アンプロダクティブタイム(=何もしない時間)はなぜ大切か

長倉(2020)は、アンプロダクティブタイム(=何もしない時間)をどれだけ持つかが人生にとって非常に大事なのだと主張する。長倉によれば、アンプロダクティブタイムをたくさん生み出すために、プロダクティブタイムの質を高め、全力で時短を進めるべきなの…

「経験論」を基盤とする英米哲学の系譜

一ノ瀬(2016)は、英語圏の哲学的系譜すなわち英米哲学の諸潮流は「経験」を基盤に据えるという発想に導かれているとの視点から英米哲学史を概説している。一ノ瀬によれば、経験論における「経験的」とは、「努力し試みることの中において」という意味である…

デジタル革命がもたらすポスト人間社会

現代はデジタル革命が進行している。石田(2020)は、自身が構築を進める「新記号論」の立場から、デジタル革命が進むことにより、アナログ的な認識を担う意識的主体としての「人間」が、デジタルな記号を演算処理する計算論的主体である「ポスト人間」に席を…

カントはなぜ(純粋)理性を批判するのか

西(2020)は、カントの『純粋理性批判』を、哲学史上最も難解な著作のひとつであるが古今数多の哲学書の中でも五指に入る重要な著作だと指摘しつつも、そのエッセンスを分かりやすく説明しようと努めている。西によれば、カントの『純粋理性批判』は、人間が…

文化産業とリピドー経済がマルクス主義を敗北に追いやった

石田(2016)は、20世紀初めのマルクス主義者たちは、テイラーシステムを通した機械による人間の奴隷化やフォーディズムを通した労働者のプロレタリア化といった言説に代表されるように、労働と生産の体制についての優れた分析力によって、発達しつつあった…

資本論で読み解く「資本主義の暴力性」

斎藤(2021)は、世界中に豊かさをもたらすことを約束していた資本主義が私たちの生活や地球環境を急速に悪化させているといい、このまま資本主義に人類の未来を委ねて本当に大丈夫なのかという問題意識から、「資本主義の暴力性」に注目したかたちでマルクス…

誰でもリーダーシップを身に着けることができる王道とは

森岡(2020)は、リーダーシップの本質を「人を本気にさせる力」だと論じる。人々がワクワクするような未来の完成形を描き出し、それが絵空事ではなく本当に実現できそうだと信じさせる力、そしてその物語の中でその人ならではの特別な役割を演じられると相手…

時間は流れない、だが生命の中には時間の流れがある

橋元(2020)は、アインシュタインの相対性理論など現代物理学の知見から言えば、空間と時間は幻想だとし、かつ、時間は過去から現在、未来へと流れるものではないという。まず、相対性理論では、時間と空間は時空を構成する同一尺度(同じ単位)で捉える。ニ…

タテ社会のメカニズム

中根(2019)は、自身のロング&ベストセラー「タテ社会の人間関係」を振り返りつつ、前著の要点を簡潔に説明している。第一に、中根が主張する、日本にみられる機能集団構成の特色は、その人が持っている個々人の属性(資格)よりも、「場」(一定の個人が集…

現代思想はいかに世界を変革したか

石田(2010)は、現代思想の問いとは、私たち現代人の人間としての存在や、社会のあり方、文化や環境の成り立ちについて根本的な成立条件を問う試みだという。そのような根本的な問いは相互に結び付いて私たちの時代に固有な問題群として成立しているというの…

なぜミクロ経済学とマクロ経済学は統合されないのか

経済学は、社会科学の中でもとりわけ、物理学に代表される自然科学的なアプローチを模した学問であるとよく言われる。物理学の世界では、ニュートンのころにはすでに、天上界を支配する現象と、地上界を支配する現象を、統一した法則によって説明することに…

リアル中国史概説

私たちが中国史を考える際、どうしても日本とのつながりを中心に、日本側から中国大陸を眺めることになるので、海を挟んだ隣国の中国は、太古より強大な統一国家で、アジアの覇権国家であったというようなイメージを持ちがちである。しかし、岡本(2019)によ…

ユーラシア全域と海洋世界から眺める「新しい世界史」

岡本(2018)は、世界史における西洋中心史観を批判し、西洋中心史観で焦点が当てられている世界史の時系列と地域空間を見直すことで、西洋史観に基づかない「時代区分」と中央ユーラシアを舞台とする「東西交渉史」を組み合わせた「新しい世界史」の構想を試…

現代経済学とは何か

瀧澤(2018)は、20世紀半ば以降、この半世紀の間に経済学は大きく発展し、経済学とは何かという問いに対して「経済現象と対象とし、それを解明する学問」と単純に回答するのに大きな戸惑いを感じるようになっているという。つまり、経済学の急速な変化と多…

21世紀アジアのグローバルバリューチェーンと日本の立ち位置

後藤(2019)によれば、雁行形態論が示す通り、日本は20世紀後半にはアジア経済ダイナミズムの中心にいたが、21世紀になるとアジアは多極化時代を迎えた。後藤が示す統計データによると、世界におけるアジアのGDP比率は、1968年の10%から、2018年には28%に…

20世紀アジアの雁行形態型発展モデルとは何か

後藤(2019)によれば、雁行形態型発展モデルは、第二次世界大戦後の20世紀のアジアにおける日本の経済発展プロセスとアジア諸国との関係を説明するのに有用なモデルである。戦後の歴史を振り返るならば、様々な国際政治経済的な要因が重なり、アジアの中で…

ブラック–ショールズ理論をざっくりと理解してみる

今回は、教養としてブラック-ショールズ理論を捉え、ざっくりとブラック―ショールズ方程式を理解してみようと思う。ブラック―ショールズ理論といえば、金融派生商品の価格付けの基礎となる理論で、ノーベル経済学賞につながった金融工学の理論でもあるので…

アジアはいかにして現在のアジアになったのか

岩崎(2019)は、世界人口の約6割を抱え、広大な面積を占めるアジアについて、東アジア、東南アジア、南アジアのサブ地域に区分し、2300年ほどのアジア史を各国史ではなく一体のものと捉え、アジアの内部勢力(自律)と外部勢力(他律)の相克と共同、その結…

妄想から始めよー目に見えない停滞感を打ち破るビジョン思考

佐宗(2019)は、ビジネスや企業経営における思考法の領域では、これまで、カイゼン思考、戦略思考、デザイン思考が存在していたという。しかし、PDCAサイクルで回していくカイゼン思考は、不確実性の高いVUCAやAIなどによる自動化の時代には弱く、戦いに勝…

成功とは集団的現象である

私たちは、成功したいと願い、成功を目指して努力をするし、実力を身に着けようとする。しかし、知っておくべきことがある。バラバシ (2019)によれば、成功とは「個人的なものではなく集団的なものであり、あなたが属する社会の反応を必要とする」ということ…

生命は誕生するものではなく、死んだこともない

池田(2019)は、現代の生物学の知識を用いて、生命とは何かについての解説を行っている。それによると、子供が生まれる時などに一般的に使われる「新しい生命が誕生した」という表現は、生物学的には正しくない。何らかの物質が絡み合って生命が誕生するわけ…

私の内部で時間は流れ、その時間の中で私は存在する

私たち人間は、石器時代に完成したハードウェア(脳、認知機能)と、人類が生み出した言語や数学といった道具を組み合わせて世界を認識している。そのような人間が、絶対空間の中の「平らな地面」で暮らし、「絶対的な時間が過去から現在、未来へと均一に流…

無期限の品質保証書を有する数学の特殊性

現代科学の発展により、人間は、自分では認識できない微小の世界から巨視の世界まで理解することが可能になった。その原動力となったのが、間違いなく数学である。言い換えれば、数学という特殊な性格を持った学問が、人間がこの世界を認識する能力を格段に…

時間は本当に存在しないのか

人間は、自分の周りの世界に適応するために思考や言語を発達させ、それらを生活の道具として用いてきた。それらの最も基本的な概念には、物、事、時間、空間、自然数などが含まれ、これらの基本概念を用いて世界を理解しようとしてきたのである。これらの概…