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デジタル革命がもたらすポスト人間社会

現代はデジタル革命が進行している。石田(2020)は、自身が構築を進める「新記号論」の立場から、デジタル革命が進むことにより、アナログ的な認識を担う意識的主体としての「人間」が、デジタルな記号を演算処理する計算論的主体である「ポスト人間」に席を…

カントはなぜ(純粋)理性を批判するのか

西(2020)は、カントの『純粋理性批判』を、哲学史上最も難解な著作のひとつであるが古今数多の哲学書の中でも五指に入る重要な著作だと指摘しつつも、そのエッセンスを分かりやすく説明しようと努めている。西によれば、カントの『純粋理性批判』は、人間が…

文化産業とリピドー経済がマルクス主義を敗北に追いやった

石田(2016)は、20世紀初めのマルクス主義者たちは、テイラーシステムを通した機械による人間の奴隷化やフォーディズムを通した労働者のプロレタリア化といった言説に代表されるように、労働と生産の体制についての優れた分析力によって、発達しつつあった…

資本論で読み解く「資本主義の暴力性」

斎藤(2021)は、世界中に豊かさをもたらすことを約束していた資本主義が私たちの生活や地球環境を急速に悪化させているといい、このまま資本主義に人類の未来を委ねて本当に大丈夫なのかという問題意識から、「資本主義の暴力性」に注目したかたちでマルクス…

誰でもリーダーシップを身に着けることができる王道とは

森岡(2020)は、リーダーシップの本質を「人を本気にさせる力」だと論じる。人々がワクワクするような未来の完成形を描き出し、それが絵空事ではなく本当に実現できそうだと信じさせる力、そしてその物語の中でその人ならではの特別な役割を演じられると相手…

時間は流れない、だが生命の中には時間の流れがある

橋元(2020)は、アインシュタインの相対性理論など現代物理学の知見から言えば、空間と時間は幻想だとし、かつ、時間は過去から現在、未来へと流れるものではないという。まず、相対性理論では、時間と空間は時空を構成する同一尺度(同じ単位)で捉える。ニ…

タテ社会のメカニズム

中根(2019)は、自身のロング&ベストセラー「タテ社会の人間関係」を振り返りつつ、前著の要点を簡潔に説明している。第一に、中根が主張する、日本にみられる機能集団構成の特色は、その人が持っている個々人の属性(資格)よりも、「場」(一定の個人が集…

現代思想はいかに世界を変革したか

石田(2010)は、現代思想の問いとは、私たち現代人の人間としての存在や、社会のあり方、文化や環境の成り立ちについて根本的な成立条件を問う試みだという。そのような根本的な問いは相互に結び付いて私たちの時代に固有な問題群として成立しているというの…

なぜミクロ経済学とマクロ経済学は統合されないのか

経済学は、社会科学の中でもとりわけ、物理学に代表される自然科学的なアプローチを模した学問であるとよく言われる。物理学の世界では、ニュートンのころにはすでに、天上界を支配する現象と、地上界を支配する現象を、統一した法則によって説明することに…

リアル中国史概説

私たちが中国史を考える際、どうしても日本とのつながりを中心に、日本側から中国大陸を眺めることになるので、海を挟んだ隣国の中国は、太古より強大な統一国家で、アジアの覇権国家であったというようなイメージを持ちがちである。しかし、岡本(2019)によ…

現代経済学とは何か

瀧澤(2018)は、20世紀半ば以降、この半世紀の間に経済学は大きく発展し、経済学とは何かという問いに対して「経済現象と対象とし、それを解明する学問」と単純に回答するのに大きな戸惑いを感じるようになっているという。つまり、経済学の急速な変化と多…

21世紀アジアのグローバルバリューチェーンと日本の立ち位置

後藤(2019)によれば、雁行形態論が示す通り、日本は20世紀後半にはアジア経済ダイナミズムの中心にいたが、21世紀になるとアジアは多極化時代を迎えた。後藤が示す統計データによると、世界におけるアジアのGDP比率は、1968年の10%から、2018年には28%に…

20世紀アジアの雁行形態型発展モデルとは何か

後藤(2019)によれば、雁行形態型発展モデルは、第二次世界大戦後の20世紀のアジアにおける日本の経済発展プロセスとアジア諸国との関係を説明するのに有用なモデルである。戦後の歴史を振り返るならば、様々な国際政治経済的な要因が重なり、アジアの中で…

ブラック–ショールズ理論をざっくりと理解してみる

今回は、教養としてブラック-ショールズ理論を捉え、ざっくりとブラック―ショールズ方程式を理解してみようと思う。ブラック―ショールズ理論といえば、金融派生商品の価格付けの基礎となる理論で、ノーベル経済学賞につながった金融工学の理論でもあるので…

アジアはいかにして現在のアジアになったのか

岩崎(2019)は、世界人口の約6割を抱え、広大な面積を占めるアジアについて、東アジア、東南アジア、南アジアのサブ地域に区分し、2300年ほどのアジア史を各国史ではなく一体のものと捉え、アジアの内部勢力(自律)と外部勢力(他律)の相克と共同、その結…

成功とは集団的現象である

私たちは、成功したいと願い、成功を目指して努力をするし、実力を身に着けようとする。しかし、知っておくべきことがある。バラバシ (2019)によれば、成功とは「個人的なものではなく集団的なものであり、あなたが属する社会の反応を必要とする」ということ…

生命は誕生するものではなく、死んだこともない

池田(2019)は、現代の生物学の知識を用いて、生命とは何かについての解説を行っている。それによると、子供が生まれる時などに一般的に使われる「新しい生命が誕生した」という表現は、生物学的には正しくない。何らかの物質が絡み合って生命が誕生するわけ…

私の内部で時間は流れ、その時間の中で私は存在する

私たち人間は、石器時代に完成したハードウェア(脳、認知機能)と、人類が生み出した言語や数学といった道具を組み合わせて世界を認識している。そのような人間が、絶対空間の中の「平らな地面」で暮らし、「絶対的な時間が過去から現在、未来へと均一に流…

無期限の品質保証書を有する数学の特殊性

現代科学の発展により、人間は、自分では認識できない微小の世界から巨視の世界まで理解することが可能になった。その原動力となったのが、間違いなく数学である。言い換えれば、数学という特殊な性格を持った学問が、人間がこの世界を認識する能力を格段に…

時間は本当に存在しないのか

人間は、自分の周りの世界に適応するために思考や言語を発達させ、それらを生活の道具として用いてきた。それらの最も基本的な概念には、物、事、時間、空間、自然数などが含まれ、これらの基本概念を用いて世界を理解しようとしてきたのである。これらの概…

人間ではなくアルゴリズムが支配する未来

近代から現代にかけて、人類は自らの想像力の産物でもある「神による支配」を覆し、人間の命と情動と欲望を神聖視する「人間至上主義革命」を引き起こしたといわれている。人間至上主義の一環として派生したのが、自由主義、社会主義、進化論的人間至上主義…

発想力を高める方法

奥山(2019)は、クリエイティビティを発揮し、発想力を高める方法として、「自分の手で、目の前の紙に「絵」を描くこと」をお勧めするという。手で絵を描くうちに、ぼんやり頭に浮かんでいるだけだったアイデアが、次第に輪郭を帯びて、明確になってくること…

「デザイン」の本質

デザインはビジネスにとって必要不可欠な要素である。奥山(2019)によれば、デザインとは、「モノ」自体のコンセプトを立案し、開発からマーケティングまで、全体の枠づくりを目指す仕事である。別の言い方をすれば、デザインとは、人間が自分たちの生活を良…

「意味のウェブ」が可能にした想像上の秩序

ハラリ(2018)は、人間(人類、サピエンス)が世界を支配しているのは、彼らだけが共同主観的な意味のウェブ、すなわち、彼らに共通の想像の中にだけ存在する法律やさまざまな力、もと、場所、のウェブを織りなすことができるからだと指摘する。人間以外の生…

未来からやってきた数学理論「宇宙際タイヒミュラー理論」とは何か

宇宙際タイヒミュラー理論(Inter-Universal Teichmüller Theory: IUT理論)とは、京都大学の望月新一教授が整数論の非常に難しい予想問題である「ABC予想」に関連して発表した理論で、一般的な数学のパラダイムの枠内では語れない、あまりにも斬新なもので…

なぜ数学が役立つのか

私たちは小中高と、ほぼ義務的に算数、数学を勉強する(勉強させられる)。その渦中にいると、とりわけ受験対策で忙しくなるならば、何のために数学を勉強する必要があるのか考える余裕さえなくなるだろう。その点において、西成(2019)は、数学がいかに役立…

認識論としての正規分布

確率論的視点というのがある。これは、世の中の物事に絶対はなく、すべての出来事は確率的に生起するのであり、多くの場合それは正規分布に従うといったような視点である。量子力学では決定論と決別し、素粒子の存在を確率論的に扱っている。そして、アイン…

自然科学で人間を理解することは可能なのか

自然科学は、人類のこれまでの発展に大きく寄与してきた。自然科学は、自然すなわち物質世界を扱う学問で、人間の営みを対象とする人文科学や社会科学と区別される。であるから、直感的に、自然科学で人間を理解することは可能かと聞かれれば、ノーと答えた…

ビジネスプロデュースとは何か

三宅・島崎2015)は、小粒な新規事業ではなく、数千億円規模のビジネスを創造することを「ビジネスプロデュース」と呼ぶ。三宅・島崎によれば、ビジネスプロデュースとは「社会的課題を取り込み、それを解決する形での業界を超えた構想を描き、その実現に向け…

自然科学としての言語学

言語学は、文学部などで学ぶ分野であって、どちらかというと文科系の学問であると従来から考えられている。しかし、酒井(2019)は、自然科学としての言語学を始めた確立した人物としてノーム・チョムスキーをとりあげ、チョムスキーの理論に基づく言語脳科学…